2012年2月15日水曜日

円城塔が芥川賞

1月半ば、円城塔氏が芥川賞を受賞したというニュースをNHKオンラインで耳にして、とたんに私が素っ頓狂な声を上げたので、主人がどうした、おかしくなったかと驚いた。

円城塔氏が芥川賞を受賞インタビューで、
「芥川賞というのは多くの読者に読まれるものなので、もっと多くの人に読んでもらえるような作品を書かなくては、と思います」
とのことです、と言うのを聞いて、なるほど、そう思ってるんだ、と思う。本人も仰るように、読む人を限定する作品だと思っていたので、芥川賞なんてメジャーなものを受賞するなんて思いもしなかった。でもこれまで2度ノミネートされていて、3回目で受賞だったらしい。知らなかった。

  彼の『Self-Reference ENGINE』は多次元に分裂してしまった世界がどうとかという連作短編の形を取っていた。その読後感は昨年夏にバーゼルのバイエラー財団(の美術館)でブランクーシの彫刻を見たときの感じに似ていたと思う。
話の筋からというよりは文体と単語そのものから、世界観とか、言葉とはなにか、それを使う人間とはどう世界を意識し、世界はどう定義され、実際の世界とその定義はどれくらいずれているのか、ということを考えさせられる。なにか教訓的な結論が出るわけではないのだけど。

次は、伊藤計劃氏(円城塔と大体同時期にデビューして、3年前に亡くなった作家)の遺稿を引き継いで、完結させる作品が進行中らしい。伊藤計劃も大変な人気だったのに、私が読んだときにはすでに亡くなっていた。惜しい人を亡くしたなって、会ったこともないのに、思った。途中までの原稿が円城塔氏によって作品として完結させられるとしたら、すばらしいことだ。

日本に帰ったら芥川賞受賞作「道化師の蝶」を読んでみよう。…古本屋さんに行ったらたくさん積んであるかもしれませんな。